美容サロン開業の届出・手続き一覧
保健所・税務署・労働基準監督署・消防署
開業に必要なすべての届出を完全網羅
この記事でわかること
- 1 美容室・まつエクサロンに必須の保健所への開設届
- 2 税務署への開業届・青色申告承認申請書の提出方法と期限
- 3 従業員を雇う場合の労働基準監督署・ハローワークへの届出
- 4 内装工事前に必要な消防署への届出
- 5 個人事業主と法人設立の比較と選び方
美容サロン開業に必要な届出一覧
保健所
美容所開設届(美容室・まつエク必須)
開業1〜2週間前税務署
開業届・青色申告承認申請書
開業後1ヶ月以内消防署
防火対象物使用開始届・工事等計画届
工事着工7日前労働基準監督署
労働保険関係成立届(従業員雇用時)
雇用後10日以内ハローワーク
雇用保険適用事業所設置届
雇用後10日以内年金事務所
社会保険新規適用届(法人の場合)
設立後5日以内保健所への届出
美容室・まつエクサロンは必須
対象となるサロン
- ・ 美容室(カット・カラー・パーマなど)
- ・ まつげエクステンションサロン(美容師免許が必要)
- ・ 眉毛サロン(一部施術で美容師免許が必要)
※ エステサロン・ネイルサロンは保健所届出不要(一部自治体で届出制度あり)
手続きの流れ
事前相談(工事前)
工事着工前に、計画図面を持参して管轄保健所へ相談。構造設備基準を確認し、不備があれば修正が可能です。
書類提出(開業1〜2週間前)
美容所開設届と必要書類を保健所に提出。この時に開設検査の日程を調整します。
開設検査(開業2〜3日前)
保健所職員が店舗を訪問し、構造設備が基準に適合しているか検査。店内は営業時と同じ状態にしておきます。
確認済証の交付
検査に合格すると「美容所確認済証」が交付され、営業を開始できます。
必要書類チェックリスト
-
美容所開設届
保健所窓口で入手またはホームページからダウンロード
-
施設平面図・配置図
作業場面積、設備配置がわかる図面
-
美容師免許証(全員分)
原本または写し
-
管理美容師講習修了証
美容師が2名以上の場合に必要
-
従業員全員の診断書
結核・感染性皮膚疾患の有無が記載されたもの(有効期限6ヶ月以内)
-
登記事項証明書(法人の場合)
6ヶ月以内に発行されたもの
-
検査手数料
約20,000円前後(自治体により異なる)
構造設備基準(東京都の例)
広さ・構造
- - 作業室面積:13平米以上
- - 天井高:2.1m以上
- - 床・腰板:不浸透性材料使用
- - 待合所:作業室と区分
衛生設備
- - 採光・照明:100ルクス以上
- - 換気:炭酸ガス濃度0.5%以下
- - 消毒設備:エタノール、紫外線消毒器等
- - 流水装置・蓋付き汚物箱
税務署への届出
開業届・青色申告承認申請
開業届
個人事業の開業を届け出る書類
青色申告承認申請書
青色申告を行うための承認申請
青色申告のメリット
-
1
最大65万円の特別控除
電子申告(e-Tax)で最大65万円、それ以外で最大55万円の控除
-
2
赤字の3年間繰越
事業の赤字を翌年以降3年間繰り越して所得と相殺可能
-
3
少額減価償却資産の即時償却
30万円未満の資産を取得年度に全額経費計上可能
提出方法
e-Tax(オンライン)
マイナンバーカードがあれば、国税庁のe-Taxサイトから24時間いつでも提出可能
税務署窓口
管轄の税務署に直接持参。受付時間は平日8:30〜17:00
郵送
控えに収受印が必要な場合は、返信用封筒(切手貼付)を同封
消防署への届出
内装工事・使用開始前に必須
防火対象物工事等計画届出書
工事着工の7日前まで
内装工事を行う場合
テナントで修繕、模様替え、間仕切り等の内装工事を行う場合に必要。変更後の安全性や消防設備の設置状況を事前に審査します。
防火対象物使用開始届出書
使用開始の7日前まで
すべての開業(居抜き含む)
内装工事の有無に関わらず、建物を新たに使用する場合に必要。居抜き物件でも業態変更時には提出が必要です。
必要書類チェックリスト
- 防火対象物概要表
- 案内図(周辺地図)
- 平面図・立面図・断面図
- 詳細図・展開図
- 室内仕上表・建具表
注意:届出を怠った場合
未届の場合、消防署の立入検査で消防法違反となり、消防用設備の新設・増設命令が下される可能性があります。工事後の是正は費用がかさむため、必ず事前に届出を行いましょう。
労働関係の届出
従業員を雇用する場合に必要
対象となるケース
パート・アルバイトを含め、1人でも従業員を雇用する場合は労働保険(労災保険・雇用保険)への加入が必要です。法人の場合は、代表者1人でも社会保険への加入が義務となります。
労働保険の届出(労働基準監督署・ハローワーク)
| 届出書類 | 提出先 | 期限 |
|---|---|---|
| 労働保険関係成立届 | 労働基準監督署 | 雇用後10日以内 |
| 労働保険概算保険料申告書 | 労働基準監督署 | 雇用後50日以内 |
| 雇用保険適用事業所設置届 | ハローワーク | 雇用後10日以内 |
| 雇用保険被保険者資格取得届 | ハローワーク | 雇用月の翌月10日まで |
社会保険の届出(年金事務所)
| 届出書類 | 提出先 | 期限 |
|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金保険新規適用届 | 年金事務所 | 設立後5日以内 |
| 被保険者資格取得届 | 年金事務所 | 雇用後5日以内 |
| 被扶養者届 | 年金事務所 | 雇用後5日以内 |
就業規則の届出
常時10人以上の従業員を雇用する場合は、就業規則を作成し、労働基準監督署への届出が必要です。届出を怠ると30万円以下の罰金の対象となります。
個人事業主 vs 法人設立
どちらを選ぶべき?
個人事業主
メリット
- + 開業届を出すだけで開業可能(費用無料)
- + 手続きが簡単で事務負担が少ない
- + 廃業も容易に行える
デメリット
- - 累進課税で利益が出ると税負担増(最大45%)
- - 赤字繰越は3年間まで
- - 融資の審査で法人より不利な場合がある
法人(会社設立)
メリット
- + 法人税率は最大23.4%で節税効果
- + 赤字繰越が10年間可能
- + 社会保険完備で求人に有利
- + 金融機関からの融資が受けやすい
デメリット
- - 設立費用が必要(株式会社約25万円〜)
- - 経理・事務作業の負担が大きい
- - 赤字でも法人住民税の支払い義務あり
法人化を検討すべきタイミング
500〜600万円以上
1,000万円を超える
この水準を超えてきたら、法人化による節税メリットが大きくなります。複数店舗展開を目指す場合も法人化がおすすめです。
開業届出スケジュール
事前相談
保健所・消防署へ図面を持参して事前相談。構造設備基準を確認。
内装工事開始
消防署へ「防火対象物工事等計画届」を提出(工事7日前まで)。
保健所届出
保健所へ「美容所開設届」を提出。開設検査の日程を調整。
消防署届出・保健所検査
「防火対象物使用開始届」を提出。保健所の開設検査を受ける。
営業開始
美容所確認済証を受領し、営業開始。
税務署届出
税務署へ「開業届」を提出。青色申告する場合は「青色申告承認申請書」も提出(2ヶ月以内)。
労働保険・社会保険
労働基準監督署・ハローワーク・年金事務所へ届出。雇用後5〜10日以内。
よくある質問(FAQ)
エステサロンやネイルサロンでも保健所届出は必要ですか?
エステサロン・ネイルサロンは基本的に保健所への届出は不要です。ただし、まつげエクステンションは美容師免許が必要な「美容行為」に該当するため、保健所への美容所開設届が必須となります。また、一部の自治体では独自の届出制度を設けている場合があるため、開業予定地の保健所に確認することをおすすめします。
開業届を出さなくても営業はできますか?
税務署への開業届を出さなくても、法律上は営業可能です。ただし、開業届を出さないと青色申告ができず、最大65万円の特別控除が受けられません。また、屋号での銀行口座開設や、各種融資・補助金の申請にも開業届の控えが必要になることが多いため、提出しておくことを強くおすすめします。
自宅サロンでも消防署への届出は必要ですか?
自宅の一部をサロンとして使用する場合でも、内装工事を行う場合は消防署への届出が必要です。また、不特定多数のお客様が出入りする場合は「防火対象物使用開始届」の提出が必要になる場合があります。建物の構造や使用形態によって要否が異なるため、管轄の消防署に事前相談することをおすすめします。
パート・アルバイトを1人雇う場合も労働保険は必要ですか?
はい、必要です。パート・アルバイトを含め1人でも従業員を雇用すると、労災保険への加入が義務となります。また、週20時間以上勤務し、31日以上の雇用見込みがある場合は雇用保険への加入も必要です。届出を怠ると、労働者が事故に遭った際に保険給付を受けられなくなる可能性があります。
居抜き物件でも保健所の検査は必要ですか?
はい、必要です。たとえ前の経営者が美容室を営業していた居抜き物件であっても、経営者が変わる場合は新たに美容所開設届を提出し、保健所の検査を受ける必要があります。ただし、構造設備が基準を満たしていれば、検査自体はスムーズに進むことが多いです。
開業初年度から法人化すべきですか?
開業初年度は個人事業主としてスタートすることをおすすめします。法人設立には約25万円(株式会社)の費用がかかり、経理・事務負担も増えます。年間所得が500〜600万円を超えてきた段階で法人化を検討するのが一般的です。ただし、最初から複数店舗展開を計画している場合や、大きな融資を受ける予定がある場合は、初年度から法人設立を検討する価値があります。